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第1話 アラサー新妻パリへの誘い~ワインと美食の夢の旅~

   『プロローグ

北九州の夜は静かで、星が散りばめられた空が広がっている。香澄はタワーマンションのリビングで、旦那の悠真と一緒にくつろいでいた。悠真は大手の高級コンサルタント会社に勤めるエリート街道の歩行人で、だれに対しても分け隔てのない性格は同姓異性問わず人々の心を惹きつける。同い年の彼は香澄にとってかけがえのない存在だった。香澄はスチュワーデスとしてのキャリアを終え、現在は家事に専念しているが、その美しさとボーイッシュな魅力は依然として彼女を輝かせていた。

「今日は早めに寝るわね。」香澄は微笑みながら悠真に告げた。悠真は優しく微笑み返し、彼女の額にキスをして「おやすみ、香澄。いい夢を見てね。」と囁いた。

香澄は寝室に向かい、ベッドに横たわる。彼女には特別な能力があった。幼い頃に従兄弟のお兄ちゃんからもらった「ワインと美食の実」を食べたことで、特別な夜に布団に入ると、世界各地の美味しい料理とワインに巡り会える能力を持っていた。

目を閉じると、心地よい眠気が彼女を包み込み、次第に意識が遠のいていく。そして、気がつくと彼女はパリにいた。夜のロアンヌの駅前広場を歩いている。夜のパリはロマンティックな雰囲気に満ちていて、街灯が柔らかく輝き、風が肌を優しく撫でる。

   『トロワグロ兄弟のレストラン

香澄がパリの石畳の道を歩いていると、彼女の目に「Troisgros(トロワグロ)」という看板が飛び込んできた。その魅力的な名前に惹かれ、彼女は自然とその扉を開けた。店内に入ると、温かな空気とともに、香ばしい料理の香りが彼女を迎えた。木製の家具と古いポスターが並ぶインテリアは、パリの古き良き時代を彷彿とさせる。ジャズのメロディーが静かに流れ、心地よい空間を作り出していた。

「Bonsoir, mademoiselle. お席にご案内いたします。」黒髪のウェイターが彼女に声をかけ、席に案内した。香澄は窓際の席に腰を下ろし、外の美しい夜景を眺めた。

メニューを手に取ると、香澄は前菜に「Escalope de Saumon(鮭のエスカロップ)」を選んだ。鮭は薄くスライスされ、レモンとディルのソースでマリネされている。ワインリストからは「Chablis Grand Cru 2015」を選んだ。香澄はワインを一口飲むと、その清涼感とミネラル感が口の中で広がり、鮭の風味を引き立てる。

  『トロワグロ兄弟とリヨンの恩師

トロワグロ兄弟、ジャンとピエールは、20世紀後半のフランス料理界に革命をもたらした天才シェフである。彼らはリヨンで修行を積み、特に彼らの恩師、マリー・エリーズ・ジャックから多くを学んだ。彼女はリヨンの料理の伝統と革新を見事に融合させた女性シェフであり、その影響はトロワグロ兄弟の料理に色濃く反映されている。

香澄の前に運ばれてきた鮭のエスカロップは、彼らの料理哲学を象徴していた。シンプルながらも素材の持つ本来の味を最大限に引き出す技術は、まさに彼らの真骨頂だった。鮭の柔らかな食感とレモンの酸味が見事に調和し、彼女の舌を楽しませた。

続いてメインディッシュには「Carré d'Agneau(子羊のラック)」が選ばれた。香澄は、ボルドーの赤ワイン「Château Lafite Rothschild 2005」を選んだ。ボルドー地方の偉大なワインは、子羊のジューシーな肉質と絶妙にマッチする。

子羊のラックは、外はカリカリ、中はジューシーに焼き上げられており、タイムとローズマリーの香りが広がる。肉を口に運ぶと、その柔らかさと風味が一瞬で広がり、香澄は思わずため息をついた。ワインの深いルビー色の液体が口の中で広がり、果実味とタンニンのバランスが絶妙だった。

   『シャンゼリゼ通りの夜

レストランを後にした香澄は、シャンゼリゼ通りを歩き始めた。クリスマス前のパリは恋人たちで賑わい、街全体がロマンティックな雰囲気に包まれていた。イルミネーションが輝き、香澄の心に温かな気持ちが広がる。

「恋愛って本当に素敵ね。」香澄はつぶやいた。彼女は悠真との甘酸っぱい記憶を思い出しながら歩いた。初めてのデート、プロポーズの瞬間、そして結婚式の日々が脳裏に蘇る。

朝の太陽の光が柔らかく彼女の顔を照らし、香澄は静かに目を覚ました。シモンズの高級ベッドの中で伸びをしながら、昨夜の夢が現実のように鮮明に思い出される。ワインと美食の旅は彼女の心を豊かにしてくれたのであった。   fin.  

       


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