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第2話 パリ7区での美食体験、香澄とアラン・パッサールのL'Arpègeでの夜

   『SNSと偏見

香澄は朝からSNS「X」を見ていた。最近、彼女は中国人や韓国人に対して偏見を持つコメントをよく目にしていた。「どうして、こんなに多くの人がいるのに、ただ国籍で人を判断するの?」と彼女は思った。香澄は日本人も含めて、性格や考え方が多種多様であることを知っていた。彼女は心の中でつぶやいた。「偏った視点はやめて欲しいなぁ。」彼女は可愛くぷんぷん怒りながら、庭のバジルに水をやった。そして、ベッドに入り、パリへの旅を夢見た。

   『パリ7区の情景

香澄が目を開けると、彼女はパリの7区にいた。エッフェル塔がそびえ立ち、セーヌ川が優雅に流れる街並みが広がっている。7区は、パリの中でも特に洗練された地域であり、古き良きパリの魅力が残る場所だ。香澄はエッフェル塔を背にして、静かな通りを歩き始めた。石畳の道にはカフェやブティックが並び、街灯が柔らかく輝いている。

「ここが私の求めていたパリね。」香澄は微笑みながらつぶやいた。彼女は道を歩きながら、歴史的な建物や美しい庭園を楽しんだ。パリの7区は、多くの観光名所が集まる場所であり、ル・ボン・マルシェやロダン美術館もこの地域に位置している。

   『L'Arpègeへの道

香澄が向かっているのは、アラン・パッサールのレストラン「L'Arpège」だった。パリ7区の中でも特に評判の高いレストランで、ミシュラン三ツ星を誇る名店だ。彼女はレストランの前に立ち、優雅な外観に見惚れた。ガラス張りの扉越しに見える内部は、シンプルでありながらも洗練されたデザインで、テーブルと椅子は上品な木製で、白いリネンのクロスがかけられている。キャンドルの柔らかな光が暖かみを添え、清潔感と優雅さが漂う空間だ。

   『前菜のオススメ

香澄は、シンプルでありながらも洗練されたインテリアに包まれた席に座り、メニューを手に取った。前菜には「Salade de Betterave et Noix(ビーツとクルミのサラダ)」を選んだ。ウェイターが運んできた一皿に目を奪われた。ビーツの鮮やかな赤とクルミの香ばしい香りが、彼女の食欲をそそった。

一口食べると、ビーツの甘みとクルミのクリスピーな食感が絶妙にマッチしている。「これ、本当に美味しいわ。」香澄は満足そうに微笑んだ。ワインリストからは「Sancerre Blanc 2003」を選んだ。ソーヴィニヨン・ブランの爽やかな酸味が、サラダの風味を引き立てる。

   『メイン料理〝リードヴォー〟

香澄は次の料理を待ちながら、厨房の方に目を向けた。ふとした瞬間、そこにアラン・パッサールが立っているのを見た。彼はまるで舞台上の俳優のように、シェフたちに指示を出しながらも、自らの手で料理を仕上げていた。その目の輝きと一つ一つの動作には、旬の男性にしかない魅力が溢れていた。香澄はその姿に心を奪われた。

パッサールの動きには、彼の師匠であるアラン・サンドランスの影が重なって見えた。サンドランスはヌーベル・キュイジーヌの先駆者であり、その革新的なアプローチは料理界に大きな影響を与えた。ゴ・ミョーはサンドランスの料理を高く評価し、その名を広く知らしめた。ヌーベル・キュイジーヌは、従来の重厚なフランス料理に対し、軽やかで新鮮な食材を使用し、繊細な盛り付けや斬新な調理法を特徴とする料理スタイルだ。

サンドランスの功績の中でも特に有名なのは、フォワグラとキャベツの組み合わせだ。彼はキャベツのような安価な野菜とフォワグラという高級食材を組み合わせ、蒸すという斬新な手法を用いた。母、増井和子の著書『パリの味』(1985年文芸春秋刊行)によれば、「フォワグラはキャベツに包んで蒸してある。フォワグラのロールキャベツ。あるいは皮をキャベツに、具をフォワグラに置き換えた蒸ギョウザと例えてもいい。ソースのないフランス料理。ギョウザは、口に含んで噛んだ時、汁があふれる。固形物を食べているはずが口に含むとトロッと液体。キャベツは脂をよく吸うし、脂とはとても合う。考案者のサンドランス氏に脱帽だ。」

「パッサール氏の技術と情熱は、まさにサンドランス氏から受け継いだものね。」香澄はその歴史に思いを馳せながら、リードヴォーを楽しみに待った。

しばらくして、メインディッシュの「Ris de Veau(リードヴォー)」が運ばれてきた。リードヴォーは外はカリカリ、中はとろけるように柔らかく、バターとハーブの香りが広がる。一口食べると、その美味しさに衝撃を受けた。バターの風味が口の中で広がり、彼女は思わずため息をついた。

「本当に素晴らしいわ。」香澄はその感動を噛みしめながら、料理とワインのハーモニーを楽しんだ。彼女はボルドーの赤ワイン「Château Mouton Rothschild 2000」を選んだ。その深いルビー色の液体が口の中で広がり、フルーティな香りが鼻をくすぐる。リードヴォーとの相性は抜群で、彼女の心をさらに満たしていった。

   『フィナーレ

香澄はリードヴォーの美味しさとワインのハーモニーに心を強く打たれた。その感動が彼女の心に深く刻まれ、まるで永遠に続くかのように感じられた。ワインとリードヴォーの抜群のマリアージュが、香澄の心を豊かに輝かせた。朝の太陽の光が柔らかく彼女の顔を照らし、香澄は静かに目を覚ました。ベッドの中で伸びをしながら、昨夜の夢が現実のように鮮明に思い出される。ワインと美食の旅は、再び彼女の心を豊かにしてくれたのだった。 fin.